マティアス&マキシム
【キャスト】【キャスト】ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス/グザヴィエ・ドラン/ピア・リュック・ファンク ハリス・ディキンソン/アンヌ・ドルヴァル
【監督】グザヴィエ・ドラン
【制作】2019年/カナダ
【日本公開】9月25日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
【配給】ファントム・フィルム
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たった一度のキスから溢れ出す友情以上の想い
今の関係を壊したくない。だからこの気持ちは胸にしまっておこう─そうして本当の想いを相手に伝えられなかった経験が、あなたにもあるのではないだろうか。気づかれなければ、認めなければ、ないのと同じと押さえつけても意志とは関係なく溢れ出す想い。いつの間にか相手のことを考え、自然と目で追っている自分に気づいて戸惑う。そんな「誰かを好きになる切なさと喜び」を真っすぐに描いたのが本作『マティアス&マキシム』だ。
30歳のマティアスとマキシムは、5歳のころからの親友で兄弟のような関係。その日も一緒に仲間のパーティーへ向かうが、そこで彼らを待っていたのは友人の妹からの「あるお願い」だった。彼女の撮る短編映画で男性同士のキスシーンを演じることになった二人は、その偶然のキスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気づき始める。美しい婚約者のいるマティアスは、思いもよらぬ相手に芽生えた感情と衝動に戸惑いを隠せない。一方、マキシムはこれまでの友情が壊れてしまうことを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていた。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとするのだが─。
本作の監督は、圧倒的なカリスマ性と才能で映画界を駆け抜けてきたグザヴィエ・ドランだ。30代を迎えた彼が今、従来の“母と子”というテーマを一新。監督・俳優人生の新たな章の幕開けとして描いたのは、痛いまでの純愛だった。ドラン自身が主人公の一人を演じ、実生活での友人たちを共演者に、地元・ケベックで撮影した本作。ドラン作品を全て観てきた者として「またやってくれた」と彼の比類なき才能を改めて感じさせられた。
それほど本作では登場人物たちの人物造形や心理描写が繊細で「この感覚を知っている」と自分自身の体験に重ねずにはいられない。だから主人公二人の目が合ったり、指先が触れたりするだけでこっちまで胸が苦しくなるし、彼らを見守る友人たちの焦れや呆れにも共感してしまう。本作について「ホモセクシャリティがテーマではなく、普遍的なラブストーリーが描きたかった」と語るドラン。彼の新境地をぜひ堪能してほしい。