アワー・フレンド
【キャスト】ケイシー・アフレック/ダコタ・ジョンソン/ジェイソン・シーゲル/チェリー・ジョーンズ/グウェンドリン・クリスティー
【監督】ガブリエラ・カウパースウェイト【脚本】ブラッド・イングルスビー
【原作】マシュー・ティーグ (「The Friend: Love Is Not a Big Enough Word」)
【制作】2019年/アメリカ
【日本公開】10月15日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座 ほか 全国ロードショー
【配給】STAR CHANNEL MOVIES
© BBP Friend, LLC - 2020
日々を懸命に生き、支え合う家族と親友
物語の冒頭、深刻な面持ちのマットとニコル夫妻が映し出される。ニコルはごまかさずに伝えたいと「避けるべき表現リスト」をマットに読ませる。「ママは眠る」「旅行に出かける」「しばらく家を離れる」──そしてマット一家と同居し、献身的に支えてくれる親友・デインの傍らにいる二人の娘を呼び出す。ニコルが近く死にゆく運命であることを伝えるために。
デインが夫妻と知り合ったのは13年前のこと。他者との壁を作りがちなマットに友人を、と考えたニコルが二人を引き合わせた。「戦争や虐げられた人々、政治腐敗など、知らしめることで世の中が変わるような記事を書きたい」と夢を語るジャーナリストのマット。一方、デインの夢はスタンダップコメディアンになることで、「ネタの前に戦略を練ろうと思っている。そのために必要なのは──」「メッセージ?」「いや、ペンとメモ帳」「君は面白いな」。こうして友人となった二人の夢はやがて実現するが、それぞれ問題も抱えるようになった。マットは世界各地を飛び回るためにほとんど家に帰らず、家族と不和になる。デインは上昇志向が薄く、恋愛や仕事が進展しない。対照的な二人だが、デインとマット一家との相性は抜群。マットがいない時にはデインが家族の支えとなり、デインが絶望した時には一家の存在が生きる勇気を与える。そうした日々の蓄積の結果、ニコルが不治の病に冒された時も、デインは一家を支えることを選んだのだ。
本作は時系列がバラバラ。そうしてニコルの病を追いつつ、デインが何故家族に尽くすのか、どれだけ家族がデインを愛しているかや、彼らの人間的な魅力が、観る者の心に染み込んでいくような構成になっているのだ。「世の女はあなたの魅力を分かっていないのよ」とデインに言うニコル。口うるさい父に不満を抱く長女に「パパに厳しすぎるんじゃないか?」と冗談めかしてたしなめ、場を和ませるデイン。「家賃も払わない居候」というデインへの心ない中傷に本気で怒るマット──日々を懸命に生き、互いを思いやり、支え合う人物たちが、悲しくも心温まるドラマを美しく彩っている。