三姉妹
【キャスト】ムン・ソリ/キム・ソニョン/チャン・ユンジュ/チョ・ハンチョル/ヒョン・ボンシク
【監督】イ・スンウォン
【制作】2020 年/韓国
【Web】http://www.zaziefilms.com/threesisters/
【日本公開】6 月17 日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
【配給】ザジフィルムズ
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娘たちの世代が明るく堂々と生きていける社会に
長女ヒスクは別れた夫の借金を返しながら、しがない花屋を営んでいる。元夫からお金をせびられても、反抗期の娘に疎まれても「大丈夫なフリ」をして毎日をやり過ごす。次女ミヨンは熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者も務めるクリスチャン。大学教授である夫と可愛い子どもに恵まれ、最近高級マンションに越してきた。新居祝いのパーティーを開くなど絵に描いたような生活を送る中、夫の裏切りにより「完璧なフリ」をした日常も綻びを見せ始める。三女ミオクは劇作家。食品卸業の夫の後妻となり、夫の連れ子である中学生の息子と3 人暮らしだが、仕事のスランプで昼夜問わず酒浸りだ。人の良い夫は必死に彼女を支えるも、ミオクは「酔っていないフリ」をして息子の保護者面談に乗り込んでしまう。
どうしようもない毎日を送る、どこにでもいるような三姉妹。普段は自分の生活で手一杯で、ほとんど顔も合わせない。そんな中、ミオクは泥酔状態の時、しばしばミヨンに電話を掛けてくる。ミヨンも母親から相談を受け、ヒスクの様子を窺いにいく。「いい大人なんだから、放っておけばいいのに」──本作を観た人はきっとそう思うだろう。しかし三姉妹は、なぜか頑なにお互いを見捨てない。その違和感の答えを、私たちは映画の最後、三姉妹が父親の誕生日を祝うため一堂に会した時に知る。
一般的に姉妹をテーマにした作品は多いが、本作の優れているところは、姉妹の絆を下地に、家父長制を乗り越えようとしている点だろう。兄弟姉妹のいる人なら一度ならず、互いの関係性に悩まされたことがあるはずだ。そして親とそれぞれとの距離の違いにも。筆者も本作を鑑賞後、両親や姉弟と過ごした子供時代の忘れかけていた記憶が蘇ってきた。それはもちろん良い記憶ばかりではなく、思い出したくない記憶もある。自分を形づくり、今の人生に至るまでの出来事の数々。その過程で抱えた悩みや苦しみを取り除き、別の人生を歩むことはできない。それでも人間は支え合えることができる──本作はそんな希望を私たちに教えてくれる。