九月と七月の姉妹
【キャスト】ミア・サリア/パスカル・カン/ラキー・タクラー
【監督】アリアン・ラベド
【原作】デイジー・ジョンソン「九月と七月の姉妹」(原題:Sisters)
【制作】2024年/アイルランド、イギリス、ドイツ
【Web】https://sundae-films.com/september-says/
【日本公開】025年9月5日(金)渋谷ホワイトシネクイント、 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
【配給】SUNDAE
© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024
不安で不快。なのに、目が離せない姉妹の物語
『九月と七月の姉妹』は、フランス人俳優として国際的に活躍し、ヨルゴス・ランティモスの公私にわたるパートナーとしても知られるアリアン・ラベドがメガホンをとった長編デビュー作だ。史上最年少でマン・ブッカー賞の候補となった作家デイジー・ジョンソンの同名小説(原題:Sisters)に着想を得て制作され、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された後も世界各国の映画祭で称賛を集める話題作である。
物語の中心となるのは10カ月違いで生まれた姉妹、セプテンバーとジュライ。支配的な姉と内気な妹は奇妙な関係ながら、深い絆で結ばれていた。だが学校でのいじめをきっかけに、母と共にアイルランドの海辺へと移り住むことに。やがてジュライは、新しい生活の中で姉妹の関係性が微妙に、そして不可解な形で変化していることに気づき始める。二人の間で繰り返される「命令ゲーム」は緊張を孕み、外界と切り離された家の中には次第に不穏な空気が満ちてゆく……。
ラベドはプレス資料の中で、以下のように語っている。“ジョンソンは私の心を深く打つ普遍的なテーマ、姉妹関係、家族の絆、遺伝、思春期、欲望、権力といったものを取り上げていて、これらが15歳の少女ジュライの目を通して描かれている。制作に着手し始めたとき、まるで神経がすり減るような感覚になった。一方の手に大切なものを持ち、もう一方の手に手術用のメスを持ってそれを切らなければならないという体験は、とても繊細で困難な作業だった”─本作は、まさに「手術用のメスで大切なものを切る」という言葉がぴったり合う、終始ぞわぞわとした感覚が伴う作品だ。『関心領域』でアカデミー賞音響賞を受賞したジョニー・バーンによるサウンドデザインが、その不穏さを巧みに増幅させる。観る者に不安や不快感を与えながらも、なぜか目が離せない─その理由は、閉塞的な関係が孕むぬかるみのような情念とリアリティを帯びた映像演出が渾然となり、独特の引力を生んでいるからだろう。居心地が悪いのに惹かれてしまう。そんな抗いがたい映像体験を、スクリーンで体感してみてほしい。