摩天楼を夢見て
~ハイパービルディングという浪漫~

現代において、世界一高い建築物とは? 中東屈指の世界都市、アラブ首長国連邦のドバイにそびえ立つ超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」こそがその問いの答えである。 地上から最頂部までの高さは、実に828メートルにも及ぶ。

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センチュリー2021年3月号

現代の高層建築物

現代において、世界一高い建築物とは?中東屈指の世界都市、アラブ首長国連邦のドバイにそびえ立つ超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」こそがその問いの答えである。地上から最頂部までの高さは、実に828メートルにも及ぶ。実際に見上げてみなければ、我々一般人には想像もつかない数字だ。参考までに記しておくと、東京のシンボルである「東京タワー」の高さは333メートル、「東京スカイツリー」は634メートルである。後者は電波塔という括りの中では世界一の高さであり、日本の技術力もなかなかのものだと思えるが、ブルジュ・ハリファと同じ高層ビルという括りだと日本一高いのは「あべのハルカス」で、その高さは300メートルにとどまる。高いビルを建築できるか否かが国の技術力を示す指標となるとは言えずとも、ブルジュ・ハリファ並の建築物には人類最先端といえる建築技術の数々が集約されているということは想像に難くない。

「摩天楼を夢見て〜ハイパービルディングという浪漫〜」の高層ビル比較グラフの図

高層建築物の歴史

ブルジュ・ハリファに至るまでの高層建築物の歴史を振り返ると、人類の建築技術は著しいスピードで発展していることが分かる。一世紀前に遡った時の世界一高い建築物はご存知フランスの「エッフェル塔」で高さは300メートル(当時)だった。これはブルジュ・ハリファの4割にも満たない。さらにもう一世紀遡った時点までに存在した建築物の高さの記録は150メートル程度である。このまま建築技術が進歩していくと、高さ1キロメートルの大台突破は人類の目と鼻の先だ。

ハイパービルディング

高さ1キロメートルを超える建築物を俗に「ハイパービルディング」という。アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、さらには日本などで実際にその建設を試みる動きがあるがいずれも計画段階であり、計画が浮上して10年以上経過しているものもある。実際に着工に至るかも未確定なのだ。実際に建築が始まっているという意味で現状ハイパービルディングに最も近いのが、サウジアラビアで建築中の「ジッダ・タワー」(ジェッダ・タワー、キングダム・タワーとも)であり、完成すればその高さは1008メートルにもなるそうだ。ジッダ・タワーは完成の目処を立てた上で2013年に着工したが現在は建設を中断している。建設再開、そしてもちろん完成時期も未定だそうだ。ハイパービルディングの建設も今や夢ではないとされている一方、我々がその実物を拝む日まではまだ少し遠いということである。

高層建築の限界とは?

建築技術の成長速度を考えるとまだまだ高い建築物を建てることが可能であるように思えるが、実際どの程度の高さまで人類は建築可能なのだろうか。大きなファクターとして挙げられる強い建築材料や、組み立て、溶接の技術については時代を経るにつれ発展が期待できそうだが、地盤についてはどうだろうか。建築物が高くなるにつれ重量も増し、地盤にかかる力も大きくなればいずれは地盤の崩壊を招くのは当然の事象だ。では地盤はどれほどの加重に耐えうるのか。ある専門家の見解によると現在の鉄とコンクリートを使った通常の形状の高層ビルであれば、高さは1600メートルが限界となるそうだ。ただし、地盤への加重を分散させるため建築物の形状を裾野の広がった山のような形状にするのであれば、机上の空論とは言えどエべレスト(約8849メートル)並の高さまで建築可能だという。なんとも夢のある話だが、日本では地震や台風が多いことや航空法による高さの制限が存在し、他国より高層建築において不利といえる。あべのハルカスの300メートルという数字も航空法に則ったものだ。とはいえ、東京スカイツリーの建築という実績からも、摩天楼を夢見る我々には希望がないというわけでもないことが分かる。これからの日本の技術者達に大いに期待しよう。

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