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ライトハウス

1890年代のニューイングランド。絶海に浮かぶ孤島に足を踏み入れた二人の灯台守。彼らに課せられた任務は、四週間にわたり灯台と島の管理を行うことだった。新人のウィンズローに対し、尊大で傍若無人な態度を取り続けるベテランのウェイク。両者の間にはたちまち、重苦しい雰囲気が垂れ込める。彼らが衝突を繰り返しながらも一日一日をやり過ごしていた矢先、猛然たる嵐が島を襲う。荒天により迎えに来る船もなく、孤立無援となった島に彼らは閉じ込められてしまったのだ。閉鎖的な空間の中、極度のストレスに曝された二人は、次第に狂気と幻想に侵され始める......。

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2021年7月号

【キャスト】ウィレム・デフォー/ロバート・パティンソン

【監督】ロバート・エガース

【制作】2019年/アメリカ

【Web】https://transformer.co.jp/m/thelighthouse/

【日本公開】7月9日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

【配給】トランスフォーマー

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

同じ灯の下、蠢く闇がふたつ

1890年代のニューイングランド。絶海に浮かぶ孤島に足を踏み入れた二人の灯台守。彼らに課せられた任務は、四週間にわたり灯台と島の管理を行うことだった。新人のウィンズローに対し、尊大で傍若無人な態度を取り続けるベテランのウェイク。両者の間にはたちまち、重苦しい雰囲気が垂れ込める。彼らが衝突を繰り返しながらも一日一日をやり過ごしていた矢先、猛然たる嵐が島を襲う。荒天により迎えに来る船もなく、孤立無援となった島に彼らは閉じ込められてしまったのだ。閉鎖的な空間の中、極度のストレスに曝された二人は、次第に狂気と幻想に侵され始める……。

長編デビュー作『ウィッチ』で称賛を浴び、業界の注目株となったロバート・エガース待望の二作目がこの『ライトハウス』。1801年、ウェールズ沖の灯台で実際に起きた事件を骨格とし、ギリシャ神話や古典文学のエッセンスを巧みに織り込んだ意欲作である。モノクロームの映像、1.19:1のアスペクト比を採用しており、その試みがもたらす映像の感触と閉塞感は、観客の感覚器へ的確な刺激を与えるはずだ。

創意工夫がなされているのは、画面作りだけではない。観客の耳にこびりつき、不安感を煽るサウンドデザイン。キャラクター表現のため、リアリティにこだわり尽くした衣装デザイン。そのいずれもが、監督やスタッフの徹底的なリサーチの上に成り立ち、観客に異質な味わいを提供しているのだ。カメラワークに関しても、例外ではない。その重量感のあるパン&ティルトはまるで、暗闇に潜む何かをゆっくりと照らし出す灯台の光の動きのようではないか。

このように作中通してシンボリックに演出される灯台を観客は重要なモチーフとして意識せざるを得ないだろう。秘めたグロテスクな本性が顕現するプロセスを見事に演じきったのは、ウィレム・デフォーとロバート・パティンソン。両者が誇る個性と演技力はこれまでのキャリアにより誰もが知るところだが、本作で見せた鬼気迫るパフォーマンスは間違いなく、彼らの名声をさらに高めるものだ。

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