ロード・オブ・カオス

“ブラックメタル”と聞いてどんなイメージが浮かぶだろうか。 高速ブラストビート、反復するギターのトレモロリフ、呪詛の如き絶叫、白塗りのメイク、そしてサタニズム──これらのイメージは、「メイヘム」によって確立されたところが大きい。

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2021年3月号

【キャスト】ロリー・カルキン(ユーロニモス)/エモリー・コーエン(ヴァーグ)/ジャック・キルマー(デッド)、 スカイ・フェレイラ(アンマリー)/ヴォルター・スカルスガルド(ファウスト)

【監督】ジョナス・アカーランド(『SPUN/スパン』) 【脚本】デニース・マグナソン(『孤島の王』)

【原作】『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』(著:マイケル・モイニハン/ディードリック・ソーデリンド)

【Web】https://lordsofchaos.jp

【日本公開】2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー! 以降順次公開

【配給】宣伝:AMGエンタテインメント、SPACE SHOWER FILMS 【提供】AMGエンタテインメント

©2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC.

ブラックメタルの伝説・メイヘムが辿った狂気と青春

“ブラックメタル”と聞いてどんなイメージが浮かぶだろうか。 高速ブラストビート、反復するギターのトレモロリフ、呪詛の如き絶叫、白塗りのメイク、そしてサタニズム──これらのイメージは、「メイヘム」によって確立されたところが大きい。

1987年、 ノルウェー。初期ブラックメタルシーンの伝説的バンド、メイヘムが活動を始めた。バンドのリーダーは、当時19歳だったギタリスト・ユーロニモス。『ロード・オブ・カオス』は、ユーロニモスとシーンを取り巻く若者たちの“青春”を切り取った映画だ。 真のブラックメタルを追求する──それがメイヘムのスタンスだった。サタニズムを標榜し、メインストリームから最も遠い曲を作り、ライヴでは豚の頭を客席に投げ入れ、ボーカルのデッドは身体を切り刻み観客に血をかけた。その過激なパフォーマンスで熱狂的なファンを獲得していく中、デッドがショットガンで頭を撃ち抜き自殺。

ユーロニモスはその遺体を写真に撮り(後にアルバムのジャケットに使用されたことはあまりに有名)、デッドの頭蓋骨の欠片を友人らに送付するなどして宣伝し、バンドはいよいよカリスマ化。ユーロニモスが経営するレコードショップ の地下にシーンの若者たちが集い、邪悪な行動を競う「インナーサークル」が生まれた。だが、メンバーのヴァーグが教会に放火したことをきっかけに、彼らの行動は歯止めが効かなくなる。

彼らが起こした事件の数々は狂気としか言いようがなく、恐怖を覚える。だが、音楽への信念や美学は実に純粋で、行動原理は全てそこに集約される。結果、1つのジャンルを確立させるに至ったのだ。文字通り命を賭して駆け抜けた彼らの青春が終わる物語の最後、メイヘムの名曲「Freezing Moon」を聴きながら覚えた感情は、切なさ悲しさ痛々しさ、そして感動である。大きな音楽的功績を残したメイヘムに、ユーロニモスに拍手を贈りたい。 監督は、“ブラックメタルの父”と言われる「バソリー」の元ドラマー、ジョナス・アカーランド。現実のシーンで活躍してメイヘムの音楽性に影響を与え、一部メンバーとも面識があったジョナスだから描き得た物語。メタルファン以外にも、むしろメタルを知らない人にこそ見てほしい傑作だ。 

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