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ゾッキ

原作は、独特のセンスで支持を集める漫画家で、ミニシアターで異例の大ヒットを記録したアニメーション映画『音楽』 (2019 年オタワ国際アニメーション映画祭グランプリ受賞)の原作者としても知られる大橋裕之。監督は日本を代表する名優、竹中直人・山田孝之・齊藤工の3人。キャストにも錚々たる面々が揃い、音楽監督をCharaが務める──。『ゾッキ』はそんな贅沢極まる布陣で送り出すヒューマン・コメディだ。

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2021年4月号

【キャスト】吉岡里帆/鈴木福/森優作/九条ジョー(コウテイ)/竹原ピストル/松井玲奈/石坂浩二(特別出演)/松田龍平/國村隼 ほか多数

【監督】竹中直人/山田孝之/齊藤工 【脚本】倉持裕 【音楽監督】Chara

【原作】大橋裕之「ゾッキA」「ゾッキB」(カンゼン刊) 

【制作】2020年/日本

【Web】https://zokki.jp/

【日本公開】2021年4月2日(⾦)全国公開<3月26日(金)愛知県先行公開>

【配給】イオンエンターテイメント

© 2020「ゾッキ」製作委員会

人生って複雑で、でもけっこう幸せだ。

原作は、独特のセンスで支持を集める漫画家で、ミニシアターで異例の大ヒットを記録したアニメーション映画『音楽』 (2019 年オタワ国際アニメーション映画祭グランプリ受賞)の原作者としても知られる大橋裕之。監督は日本を代表する名優、竹中直人・山田孝之・齊藤工の3人。キャストにも錚々たる面々が揃い、音楽監督をCharaが務める──。『ゾッキ』はそんな贅沢極まる布陣で送り出すヒューマン・コメディだ。

そして関わる一人ひとりが作品世界に自然に溶け込み、活き活きと動き回る、極上の作品に仕上がっている。 同作で織りなされるオムニバス風の物語は、どれもちょっと変な話ばかりだ。たとえば、ある冴えない少年は高校二年生にして初めての友人ができるが、友人は少年に美人の姉がいると聞いて、さかんに会いたいとせがみ出す。実は少年に 姉などいなかったが、真相を言い出すきっかけを失ううち、 友人の行動はエスカレートし、突然家の前に現れたりするようになる。友人を諦めさせるため、少年は口走る。

「姉ちゃんは一週間前、交通事故で死んだんだ!」。しかし、その嘘がまた嘘を呼び、事態は思わぬ方向へと走り出して──。 情けなかったり、変だったり、馬鹿馬鹿しかったり、ちょっと怖かったり。自分も人生のどこかで体験したような、しなかったような出来事。会ったことがあるようで、ないような、個性的な登場人物たち。そんな既視感のある独特の雰囲気が同作品の魅力の一つだろう。そして何より素晴らしいのが、人物やドラマ同士がつながり、影響し合い、一体となって世界観や哲学がいっぱいに詰まった作品世界を形成していること。そのために、次第に世界や人物、風景を好きになってしまう。

そして、考えたりするのだ。自分の持っているちょっとした秘密が、後ろめたく思っていた嘘が、巡り巡ってどこかで誰かを動かし、幸せにしていたりするのかも、と。この世界って、思っていたよりも面白いものなのかもしれない ──作品鑑賞後、あなたはきっと、自分や周りの人々を、世界を、過去や未来を、今よりもっと好きになっているはずだ。

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