恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター
【キャスト】リン・ボーホン/ニッキー・シエ
【監督】【脚本】リャオ・ミンイー
【制作】2020年/台湾
【Web】https://filmott.com/koiyama
【日本公開】8月20日(金)シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開
【配給】エスピーオー、フィルモット
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“偏人”同士の可笑しくて切ない恋のかたち
「自分にないものを持っている人」と、「自分と同じ気持ちを共有できる人」。それは全く相反するものだけど、恋愛ってその両方があって成り立つような気がする。お互いの凸凹を埋め合いながらも、どこか芯ではつながっているような。ただ、その凸凹が年月を経るごとに変化してくるから、恋愛はやっかいだ。本作『恋の病~潔癖なふたりのビフォーアフター~』は、まさにそんな凸凹を埋め合う、とびきり変わり者な二人の恋模様を描いた台湾映画。
そのユニークな設定やビジュアル、主演二人のラブリーな演技、そしてアジア初となる全編iPhone撮影も相まって、世界中で大きな話題を呼んでいる。物語は、重度の潔癖症を持つ⻘年ボーチンの視点から始まる。彼は家の中を隅々まで掃除しないと気が済まず、何度も手を洗い、シャワーを浴びる毎日を送っている。家の外は汚れているから、外出は月に一度。それも防塵服に手袋、マスクという完全武装っぷりである。そんな傍から見れば“偏人”極まりない彼はある日、電車の中で同じような完全武装をした女性ジンを発見する。
聞けば彼女も潔癖症。4時間以上外にいると発疹が出る体質だった。初めて出会った、お互いの気持ちを共有できる関係。しかも、翻訳家ながらタイピングが苦手なボーチンとは打って変わって、ジンの唯一の特技がタイピングだった。こうして奇跡的に出会った二人は自然と惹かれ合い、公私共にベストカップルとなる。しかし、ある日突如としてボーチンから潔癖症の症状が消えてしまった。そこから徐々に、二人の間にすれ違いが生まれていく……。思わず笑顔になる“偏人”っぷりとビビッドな配色で、前半はポップさ全開。
しかし、ボーチンが“治る”ことを機に、二人だけのものだった世界は大きく広がり、見える景色も変わっていく。“偏人”同士だから惹かれ合えた。そんな二人のうち片方が“偏人”じゃなくなったら?いつまでも二人で寄り添い合っていくべきなのか、それとも別々の道を歩むべきなのか──。そんな選択を迫られる切なさに、胸が締め付けられる。ボーチンとジンだけじゃない。きっと私たちもみんな程度の差こそあれ“偏人”である。だからこそ二人の喜びも悲しみも、自分事かのように心を揺さぶるのだ。