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サマー・オブ・ソウル

伝説的音楽フェス「ウッドストック」とほぼ同時期に、“ブラック・ウッドストック”と称されたブラックミュージックのフェスが開催されていたことをご存知だろうか。

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2021年9月号

【キャスト】【MUSICIANS】レイ・バレット/フィフス・ディメンション/マヘリア・ジャクソン/B.B.キング/グラディス・ナイト&ザ・ピップス/アビー・リンカーン/ヒュー・マセケラ/マックス・ローチ/デイヴィッド・ラフィン/ニーナ・シモン/スライ&ザ・ファミリー・ストーン/ステイプル・シンガーズ/スティーヴィー・ワンダー 他

【監督】アミール“クエストラブ”トンプソン

【制作】2021年/アメリカ

【日本公開】8月27日(金)TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他全国ロードショー

【配給】ウォルト・ディズニー・ジャパン

©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

1969年──米国黒人たちが奏でる熱き想い

伝説的音楽フェス「ウッドストック」とほぼ同時期に、“ブラック・ウッドストック”と称されたブラックミュージックのフェスが開催されていたことをご存知だろうか。

べトナム戦争が起こり、マルコム・Xやキング牧師といった人権活動家の暗殺が続くなど、1960年代の米国は混乱の最中にあった。そんな中、NYハーレムのマウント・モリス公園で開催されたのが、ブラック・ウッドストックこと「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」。出演はスティーヴィー・ワンダー、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(以下スライ)、ニーナ・シモン、B.B.キング……。音楽史に残る世界的ミュージシャンが出演していたにもかかわらず、この映像記録は公表されることなく、この50年忘れ去られていた。

本作『サマー・オブ・ソウル』は、その貴重なライブ映像と当時の演者・参加者へのインタビューで構成されたドキュメンタリー映画だ。映画冒頭を飾るのは、19歳の若きスティーヴィー・ワンダーが披露するドラムソロだ。彼がこれほど躍動的で熱量のあるドラムを叩くと、どれだけの人が知っていたろうか?そのステージ上、そして客席は見渡す限りの黒人たち。「ブラック・パワー」「黒人としての誇り」「私たちは美しい」─飛び交うそんな言葉たちの前に、「アポロ11号が月面に着陸した」という当時の衝撃的なニュースも一蹴される。

ハイライトの一つは、スライのステージではないだろうか。正装の黒人ミュージシャンが集まる中ストリートファッションで登場し、バンドは男女混合で白人も混じった異質な編成。「一体なんだ?」。そんな空気が漂うも、バンドが音を出した瞬間にその怪訝さは吹き飛ぶ。このパフォーマンスこそ、69年という黒人社会転換期の空気感を丸ごと封じ込めたものだと言っていい。
この映画を見て音楽・映像としての価値を見出すか、ブラックミュージックの魅力を再発見するか、米国文化史の理解のヒントとするか。あらゆる側面から見ることができる濃密な内容故に、鑑賞者によって印象は様々だろう。一つ言えるのは、見る人全てに何らかの鮮烈な印象を与える映画である、ということだ。

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