ビルド・ア・ガール

イギリス郊外、家族7人で暮らす16歳のジョアンナ。文才に長ける彼女だったが、その比類なき自己実現や表現に対する欲求を持て余しながら冴えない学生生活を送っていた。そんな日々を変えようと大手音楽情報誌のライターに応募したジョアンナは仕事を掴むことに成功するが、取材で出会ったロックスター・ジョンに入れ込み、客観的な記事を書けなくなってしまう。しかし編集部のアドバイスにより、過激な毒舌記事を乱発することでジョアンナは再び音楽業界で注目を集める。辛口批評家“ドリー・ワイルド”として人気を博し、成功に酔った彼女は次第に己を見失い始めてしまう──。

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2021年10月号

【キャスト】ビーニー・フェルドスタイン/パディ・コンシダイン/サラ・ソルマーニ/アルフィー・アレン/フランク・ディレイン/クリス・オダウド/エマ・トンプソン

【監督】コーキー・ギェドロイツ【脚本】キャトリン・モラン

【制作】2019年/イギリス

【Web】https://buildagirl.jp/

【日本公開】10/22(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

【配給】ポニーキャニオン、フラッグ

© Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019

書いては消しての繰り返し、これがヒロインの作り方

イギリス郊外、家族7人で暮らす16歳のジョアンナ。文才に長ける彼女だったが、その比類なき自己実現や表現に対する欲求を持て余しながら冴えない学生生活を送っていた。そんな日々を変えようと大手音楽情報誌のライターに応募したジョアンナは仕事を掴むことに成功するが、取材で出会ったロックスター・ジョンに入れ込み、客観的な記事を書けなくなってしまう。しかし編集部のアドバイスにより、過激な毒舌記事を乱発することでジョアンナは再び音楽業界で注目を集める。辛口批評家“ドリー・ワイルド”として人気を博し、成功に酔った彼女は次第に己を見失い始めてしまう──。

イギリスの人気コラムニスト、キャトリン・モランの半自伝的小説『How To Build a Girl』を映画化した本作は、観客に自らを唯一無二のヒーロー、ヒロインとして昇華させる術を教示する“エンパワーメント・ムービー”だ。主演はビーニー・フェルドスタイン。その体躯と佇まいに、ティーン独特のほとばしるエネルギーを内包する彼女は、自身より約10歳年下であるジョアンナというキャラクターを器用に演じきった。

ジョアンナが“ドリー・ワイルド”として成り上がる過程の描写はまさに痛快。「空き巣に才能を盗まれた? 警察を呼ぶね」「耳が膀胱炎になったみたい」──彼女のユニークな毒舌表現の数々で切り刻んだUKロッカーたちの返り血の鮮やかさに、観客たちも恍惚の表情を浮かべることだろう。さらにもう一つの注目ポイントが、「神の壁」。ジョアンナの寝室の壁に貼られた彼女にとっての神々──ブロンテ姉妹やシルヴィア・プラス、フロイト、マルクス、クレオパトラなどのピンナップが生命を持って動きだし、迷えるジョアンナに助言を与えるという、魔法のような演出を楽しめる。

「自分は本当は何がしたかったの?」「誰のために今まで頑張ってきたの?」──スクラップ&ビルドの先で己の原点を問い直すジョアンナ。上に登るため、捨ててきたものにこそヒントがある。もう一度ゴミ箱を漁り、何度でも人生を推敲してみよう。自らが満足のいくストーリーが書き上がるまで。

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