偶然と想像
【キャスト】古川琴音/中島歩/玄理/渋川清彦/森郁月/甲斐翔真/占部房子/河井青葉
【監督】・【脚本】濱口竜介
【制作】2021年/日本
【Web】https://guzen-sozo.incline.life/
【日本公開】12/17(金)Bunkamuraル・シネマ他 全国公開
【配給】Incline
©2021NEOPA/fictive
偶然がもたらす、運命の分かれ道。
シューマンのピアノ曲集《子供の情景》が流れる。美しく穏やかな旋律に思わず安心感を覚える。と、突然音楽が途絶える。途端に空気が張りつめ緊張感が走る。ここから起こる出来事は悲劇か喜劇か、それとも──。
『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ映画祭で脚本賞など4部門受賞し、世界中から熱視線を浴びている濱口竜介監督の最新作『偶然と想像』は自身初となる短編集だ。偶然によって引き合わされた者同士の運命が変わっていく様を描く、叙情的でどこか儚さが漂う会話劇。ベルリン国際映画祭では審査員グランプリを受賞しており、日本公開前から話題を呼んでいる。濱口監督といえばサスペンスチックなストーリー展開と、観客の不安を煽るようなホラーにも近い演出を得意とする人物だが、本作はひと味違った雰囲気を放っている。いつも通りの不穏さを纏いつつも、それを覆い隠すように現れるのは優しさと温もりだ。全3話の短編が織りなす偶然の物語に心を委ねた時、心地良い余韻とささやかな感動が後を引く。
◆魔法(よりもっと不確か):親友つぐみの恋バナを聞く芽衣子。最近出会った男性に心を惹かれているという。つぐみと別れた後、芽衣子はとある場所に向かうが──。
──友情と恋の狭間で迷い葛藤する芽衣子。愛というものの本質に触れた芽衣子が下した最後の決断に心を揺さぶられる。
◆扉は開けたままで:所属するゼミの教授・瀬川に単位をもらえず、就職内定が取り消されてしまう佐々木。恨みに駆られ、同級生の奈緒と共謀して色仕掛けで瀬川を陥れようとする。
──騙す奈緒と騙される瀬川。敵対関係にあるはずの二人が交わす言葉の数々が胸に刺さる。二人が迎える結末と奈緒が出した答えの先に見えたのは、切なさと強さだった。
◆もう一度:同窓会に参加するため仙台にやってきた夏子。駅に向かうエスカレーターで旧友とすれ違う。20年ぶりの再会を喜ぶ二人だったが、やがて思いもよらぬ事実が判明する。
──会話が炙り出すそれぞれの人生。想いを受け止め合う二人の暖かさが観客を包む。この出会いは偶然じゃない、必然だ。