FLEE フリー

2022 年2 月8 日、第94 回アカデミー賞のノミネート作品が発表され、とある作品が史上初の快挙を果たした。その作品とは、ドキュメンタリーとアニメーションが掛け合わさった異色の映画『FLEE フリー』だ。本作は、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートというアカデミー賞史上初の快挙を成し遂げた。

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2022年6月号

【監督】ヨナス・ポヘール・ラスムセン

【制作】2021 年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作

【Web】https://transformer.co.jp/m/flee/

【日本公開】2022 年6月10日

【配給】トランスフォーマー

© Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

アニメ×ドキュメンタリーで描き出す、衝撃の実話

2022 年2 月8 日、第94 回アカデミー賞のノミネート作品が発表され、とある作品が史上初の快挙を果たした。その作品とは、ドキュメンタリーとアニメーションが掛け合わさった異色の映画『FLEE フリー』だ。本作は、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートというアカデミー賞史上初の快挙を成し遂げた。

アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、父親が連行されて行方知れずとなり、家族と共に命懸けで祖国を脱出した壮絶な過去を持つ。10 代のころにたった1 人でデンマークへ亡命した後は研究者として成功を収め、同性の恋人と結婚の話もするように。順風満帆に見える人生だが、実は、彼は恋人にも話していない秘密を20 年以上も抱え続けていた。親友である映画監督の誘いを受け、意を決して真実を話し始めたアミン。そこで語られた彼の残酷な半生とは……。

語り手の実際の音声をアニメーションに乗せて映像化するという斬新なアイデアが用いられた理由はいくつかある。1つは語り手への配慮だ。アニメーション化することによって匿名性を保ち、アミンのプライバシーを尊重した。2 つ目は観客の視覚に訴えるためである。本作ではアニメーションによる過去の再現映像が挿入されており、それがリアリティを与え、観客を引き込むことに寄与している。他にもドキュメンタリーに親しみやすさを与える効果もあるだろう。

紛争や難民、LGBTQ+ など、様々なテーマを内包している本作。その社会的意義の高さは計り知れないが、一方でそれらのテーマに対して、自分に関係のない話だと感じる者もいるかもしれない。しかし、本作が観客に投げかけるメッセージはたった1つ──それは「自分は何者なのか」ということだ。アミンという1 人の人間がもがき、葛藤し、過去と向き合う姿を通して、我々は自身のアイデンティティについて再考するきっかけを享受するだろう。混沌とした現代社会を生きる中で、自分を見失う人は多い。そんな現代だからこそ、この作品が与えるメッセージが、より一層人々の心に突き刺さる。

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