ヘタな二人の恋の話

誰もが生きづらさを抱える現代の世の中を「マヨナカ=真夜中」に例え、必死に生きる若者たちの恋と性を描く映画レーベル「マヨナカキネマ」。『ヘタな二人の恋の話』は、そんな同レーベルの第一弾として送り出される、記念碑的作品だ。

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2022年7月号

【キャスト】街山みほ/鈴木志遠/伊藤和哉/大久保雛/小田飛鳥(友情出演)/古藤真彦/川瀬陽太/大下翔生/中嶌駿介/福田優生/北上愛莉/鈴木詩織

【監督】佐藤周

【制作】2022 年/日本

【Web】https://mayonaka-kinema.com/hetakoi/

【日本公開】7月1日(金)よりシネマート新宿にて公開ほか全国順次ロードショー

【配給】キングレコード

Ⓒ2022「ヘタな二人の恋の話」製作委員会

生きるのがヘタな二人のささやかな日々

誰もが生きづらさを抱える現代の世の中を「マヨナカ=真夜中」に例え、必死に生きる若者たちの恋と性を描く映画レーベル「マヨナカキネマ」。『ヘタな二人の恋の話』は、そんな同レーベルの第一弾として送り出される、記念碑的作品だ。

思い詰めると衝動的な行動に出たり、デリカシーのない言葉がつい出てしまったりして人から疎んじられてしまう、コミュニケーション下手な綾子と祐太。そんな二人はふとしたことから偶然出会って恋に落ち、やがて同棲を始める。しかし「生きるのがヘタ」な二人とあって、恋も仕事も、全てが上手くいかない。祐太は営業職でお客と全く会話ができず、先輩の不興を買ってしまう。仕事に悩める中で綾子の話に生返事しかできず、怒りが募った彼女はやがて家を出ていってしまう。そうして離れ離れになっても、気がつけばまた一緒にいる、お似合いの二人。だが、その先には非情な運命が待ち受けていて──。

本作を手掛けるのは、監督作がロッテルダム国際映画祭で招待上映されるなど高い評価を得る佐藤周と、ジャンルを越えて多彩な活動を見せるいまおかしんじ。主演は今作が映画初出演となる街山みほと、どこか憎めない青年を好演する鈴木志遠。その脇を川瀬陽太、小田飛鳥らが固め、ぎこちなくも愛くるしい二人の物語を盛り上げる。

美味しい食べ物、便利な品物、魂を揺さぶる表現、心洗われる風景、素敵な人々。世界は素晴らしい物で溢れている。にも拘らず、ある種の人にとって、人生はちょっとした匙加減で激化する戦場だ。苦しみを分かち合える人、大切に思える人の存在は過酷さを一瞬忘れさせてくれるが、その存在が大きくなるほど、僅かな衝突や軋轢が諸刃の剣となって迫ってきたりもする。様々な事柄に対処できずに、己の弱さ、不器用さを疎ましく思うこともある。「生き方がヘタ」というのは、本当に厄介なことだ。けれども──本作の二人が苦しみ、不器用に生きるほどに、欠陥である筈のそれらがとても尊く、美しく、大事なことだと思えてしまうのは何故なのだろう。

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