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靴ひものロンド

「もしも忘れているのなら、思い出させてあげましょう。私はあなたの妻です」──(「靴ひも」より)

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2022年9月号

【キャスト】アルバ・ロルヴァケル/ルイジ・ロ・カーショ/ラウラ・モランテ/シルヴィオ・オルランド

【監督】ダニエーレ・ルケッティ

【制作】2020年/イタリア

【Web】https://kutsuhimonorondo.jp

【日本公開】9月9日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

【配給】樂舎

© Photo Gianni Fiorito/Design Benjamin Seznec/TROIKA ©2020 IBC Movie

夫の浮気で、家族の修羅場が終わらない

「もしも忘れているのなら、思い出させてあげましょう。私はあなたの妻です」──(「靴ひも」より)『靴ひものロンド』は、インド系アメリカ人作家のジュンパ・ラヒリが惚れ込んで英訳し、アメリカで絶賛された『靴ひも』を原作に、原作者ドメニコ・スタルノーネと脚本家フランチェスコ・ピッコロ、そして名匠ダニエーレ・ルケッティの三人で脚本を練り上げて完成させた家族映画だ。

ある日、夫が告白する。別の女性と関係を持ったのだと。そこには謝罪もなければ謝意らしきものもなく、告白してどうしてほしいかの意思表示さえない。妻がそのことを指摘すると夫は逆ギレ。告白を機に家族のもとを去り、浮気相手のもとへと移り住むようになる。時々子どもたちに会いには来るが、夫のすること全てが、妻にとっては気に入らない。妻の精神状態は徐々に不安定になり、爆発していく。数々の衝突や終わることのない修羅場は、家族に大きな負荷を与え、夫妻が年老いた未来での思わぬ事件へとつながっていく──。

しかし、本作はそうした「家族の絆」を露悪的な目的で取り上げた作品ではない。育った環境や価値観の違う男女が共に生き、家庭を持つことで得るもの、失うものは何なのか。愛情や誠実さを喪失し、怒りや恐怖、惰性に支配され、ばらばらに見える家族を繋ぎ止めるものは何なのか。その主題の重々しさとは裏腹に、ミステリー風に作り込まれた作品の余韻は、時折挿入される「ジェンカ」の如くどこか爽快で軽やか。人間同士の繋がりの妙を描いた、新たな家族映画の傑作だ。

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