秘密の森の、その向こう

第72 回カンヌ国際映画祭の脚本賞とクィア・パルム賞を筆頭に、各国の映画賞を59 受賞、157 ノミネートという快挙を成し遂げた『燃ゆる女の肖像』。一切隙のない完璧な脚本と美しい描写の数々で、世界中の人々を虜にした。そんな同作を手掛けたセリーヌ・シアマ監督待望の最新作『秘密の森の、その向こう』がついに日本上陸。本作もベルリン国際映画祭で上映されるやいなや、「大傑作!」と熱い喝采を浴びた。

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2022年10月号

【キャスト】【キャスト】ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス/ニナ・ミュリス/ステファン・ヴァルペンヌ/マルゴ・アバスカル

【監督】セリーヌ・シアマ

【制作】2021 年/フランス

【Web】https://gaga.ne.jp/petitemaman

【日本公開】ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開中

【配給】ギャガ

© 2021 Lilies Films / France 3 Cinйma

時を超えた出会いがもたらす癒しと救いの物語

第72 回カンヌ国際映画祭の脚本賞とクィア・パルム賞を筆頭に、各国の映画賞を59 受賞、157 ノミネートという快挙を成し遂げた『燃ゆる女の肖像』。一切隙のない完璧な脚本と美しい描写の数々で、世界中の人々を虜にした。そんな同作を手掛けたセリーヌ・シアマ監督待望の最新作『秘密の森の、その向こう』がついに日本上陸。本作もベルリン国際映画祭で上映されるやいなや、「大傑作!」と熱い喝采を浴びた。

8 歳のネリーは両親と共に、かつて母親が幼少期を過ごした家を訪れる。大好きなおばあちゃんが亡くなり、片付けることになったのだ。しかし、思い出の品々を前に胸を締めつけられた母は、何も言わずに1 人で出ていってしまう。残されたネリーは、かつて母が遊んだという森を捜索するうちに、同じ年の少女と出会う。母と同名を名乗る彼女の家に招かれると、そこにはおばあちゃんの家と全く同じ風景が広がり、おまけに若かりし頃のおばあちゃんもいる。ネリーが出会ったその少女の正体は、“8 歳の母”だったのだ──。

シアマ監督は本作において“子どもに寄り添う”ことにこだわった。「(コロナ禍で)子どもたちは危機と苦難に直面している。だから私たち大人は、子どもたちを輪に入れ、共に協力することが重要だと思った」とシアマ監督は語る。実際に製作中は子どもの視線に合わせ、子どもと大人が同じ経験を共有することを目指したという。「あらゆる世代に共通の感動を与え、人々を結びつける作品になるように作った。劇場を出る時、互いを見る目が変わればいいと思っている」──。

『燃ゆる女の肖像』で映画史に残る衝撃のラストを生み出したシアマ監督が今回もやってくれた。本作は現在と過去をシームレスに繋ぐ構造になっている。その構造は、喪失を経験し、傷を負った登場人物を巡り合わせて癒やしを施すとともに、観客の心にも平穏と救いをもたらす。そして感動のラストへと我々を導く。物語の最後に交わされるのはなんてことない会話である。しかし、その会話に込められた想いに気づいた時、言葉にならない感情が溢れ出し、涙が頬を伝っていた。

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