夜、鳥たちが啼く

存命中は文学賞や商業的な成功に恵まれないながら、2010 年の『海炭市叙景』以降、『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などが次々と映像化され、国内外で評価されるに至った佐藤泰志が新たに映像化。「傷ついた人々や世間から見れば社会の下流で生きる人間に寄り添う目線の高さ」が共通しているとプロデューサー陣が評価した城定秀夫による監督作品だ。

記事をpdfで見る(画像クリックで別ウィンドウ表示)

記事または映画評のサムネイル画像(A4用紙サイズ/縦長)

2022年12月号

【キャスト】山田裕貴 松本まりか 森優理斗 中村ゆりか カトウシンスケ /藤田朋子/ 宇野祥平 吉田浩太 縄田カノン 加治将樹

【監督】城定秀夫

【原作】佐藤泰志「夜、鳥たちが啼く」(「大きなハードルと小さなハードル」所収 / 河出文庫刊)

【制作】2022 年/日本

【Web】https://yorutori-movie.com

【日本公開】12 月9 日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

【配給】クロックワークス

© 2022 クロックワークス

傷を背負った3人の、いびつな半同居生活

若くして小説家としてデビューするも、その後鳴かず飛ばず。同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そんな彼のもとに、職場の先輩で友人の妻であった裕子(松本まりか)が幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。慎一は恋人と暮らしていた一軒家を2 人に提供。自身は離れのプレハブで寝起きする、いびつな“半同居生活”が始まる。

3 人はそれぞれ、複雑な感情を抱えていた。慎一は新たな作品を書き上げられない葛藤などから恋人や周囲の人たちを傷つけてきた過去があり、今も書いては止まり、原稿を破り捨てる自傷行為のような日々を送っていた。裕子はアキラが眠りにつくと孤独に耐えきれず街に繰り出し、行きずりの男たちとの出会いに気を紛らわせていた。アキラは父親に去られ小学校にも馴染めず、幼い胸を痛めていた。3 人はお互いに深入りをせず、一定の距離を保ちながら、日々を重ねていくのだが──。

原作は、存命中は文学賞や商業的な成功に恵まれないながら、2010 年の『海炭市叙景』以降、『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などが次々と映像化され、国内外で評価されるに至った佐藤泰志。監督は『愛なのに』『猫は逃げた』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『よだかの片思い』などに監督や脚本で関わってきた城定秀夫。城定氏と佐藤氏は作風こそ大きく違えど、「傷ついた人々や世間から見れば社会の下流で生きる人間に寄り添う目線の高さ」が共通しているとプロデューサー陣が評価。「城定秀夫が佐藤泰志の小説を映像化したら、一体どうなるのか?」とアイデアが進められた。そこに『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』を手掛けた高田亮が脚本として加わり、本作の映像化が実現したという。

主演の山田裕貴は「繊細でそして緻密な⼈間の本当の温度や、間、呼吸、⾳を感じることができ、『こんなお芝居がやりたかったんだ!!』と何度も叫びました」と手応えをにじませたという。生きることで傷を背負い、やりきれなさにもがきつつ、何かを掴もうとする登場人物たち。その姿や、じわじわと変化する心情、絶妙な距離感に、思わず惹き込まれてしまう。

view more-映画の一覧へ-