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ザ・ホエール

恋人アランを亡くしたショックから現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならず、頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに生活を頼っている。

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2023年4月号掲載

【キャスト】ブレンダン・フレイザー/セイディー・シンク/ホン・チャウ/タイ・シンプキンス/サマンサ・モートン

【監督】ダーレン・アロノフスキー

【制作】2022年/アメリカ

【Web】https://whale-movie.jp

【日本公開】4月7日(金)大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、kino cinéma神戸国際 ほかロードショー

【配給】キノフィルムズ

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人は互いを赦し、わかり合えるのか

恋人アランを亡くしたショックから現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならず、頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに生活を頼っている。ある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。ところが、家にやってきたエリーは学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた──。

本作『ザ・ホエール』の原作は舞台劇。その上演を観て惚れ込み、映画化に挑んだのは『ブラック・スワン』や『マザー!』などで知られる鬼才ダーレン・アロノフスキーだ。監督が原作者の一流劇作家とタッグを組んでA24が製作したことに加え、大きな話題となっているのは、ブレンダン・フレイザーが主演を務めたこと。『ハムナプトラ』シリーズなどでハリウッドのトップスターに昇りつめながらも、心身のバランスを崩して長らく表舞台から遠ざかっていた彼が本作で披露した渾身の演技に、世界中が圧倒されている。フレイザーが演じる主人公は、余命わずかな体重272キロの孤独な男。毎日メーキャップに4時間を費やし、5人がかりで着脱するファットスーツで演技に臨むという過酷な撮影だったが、苦行のような日々を生きるチャーリーを時にチャーミングな人間性を垣間見せながら見事に体現することに成功した。

本作のテーマの一つは、アイデンティティと容易には克服できない苦悩。ルッキズムや性的指向への差別など様々な偏見の中で生きる私たちに「ありのままの自分を見せることの大切さ」「互いを赦し、わかり合うことの重要性」を教えてくれる。恋人の死や娘との人生を放棄したことなど、自分が変えられたかもしれない全てのことへの罪悪感を抱えるチャーリーが、死の間際に愛する人々と向き合う本作。メルヴィルの名作「白鯨」が主人公と娘を結びつけた時、大きな感動が胸を打つ─チャーリーの最期の5日間を見届けてほしい。

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