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オオカミの家

“助け合って幸せに”をモットーとするチリ南部のドイツ人集落に、動物好きのマリアという娘が暮らしていた。ある日ブタを逃がしてしまった彼女は、厳しい罰に耐えられず集落から脱走、逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子ブタの世話をするようになる。しかし安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえてきて……。

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2023年8月号

【キャスト】【声の出演】アマリア・カッサイ (マリア 、 アナ 、 ペドロ) 、ライナー・クラウゼ (オオカミ)

【監督】クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ

【制作】2018年 / チリ

【Web】http://www.zaziefilms.com/lacasalobo/

【日本公開】8/19(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開

【配給】ザジフィルムズ

©Diluvio & Globo Rojo Films, 2018

類いまれな表現力に圧倒される傑作アニメーション

“助け合って幸せに”をモットーとするチリ南部のドイツ人集落に、動物好きのマリアという娘が暮らしていた。ある日ブタを逃がしてしまった彼女は、厳しい罰に耐えられず集落から脱走、逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子ブタの世話をするようになる。しかし安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえてきて……。

チリに実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」にインスパイアされ制作されたストップモーション・アニメーション『オオカミの家』。『ミッドサマー』で知られる監督アリ・アスターが「ヤン・シュヴァンクマイエルとクエイ兄弟の後継者だ」と絶賛し、一晩で何度も観賞した上、本作の監督クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャにコンタクトを取ったエピソードを持つ作品だ。アリ・アスターは『オオカミの家』と同時上映となる短編『骨』の製作総指揮に名乗りを上げ、自身の最新作の『Beau is Afraid』のアニメパートも彼らに依頼した。その他にもレオン&コシーニャはトム・ヨークのバンド「The Smile」やPJハーヴェイのMVの監督を務めるなど、異なるフィールドで活躍するクリエイターからも注目を集めている。

撮影場所は、チリ国立美術館やサンティアゴ現代美術館をはじめとする、様々な国の美術館やギャラリー。そこで実寸大の部屋のセットを組み、等身大の人形や絵画をミックスして制作。制作途中の映像をエキシビジョンの一環として観客に公開するという手法で映画を完成させていったという。

本作の特徴の一つは、部屋の壁画という二次元の表現と、アニメーションという三次元の表現が違和感なく繋がり、反応し合って物語を織りなしていること。そして見る見る形を変えて、特殊な環境で育った主人公の切迫感や閉塞感などが表現されるのだ。その特異さ、斬新さに、思わずスクリーンに目が釘付けになる。何度も観て、どんな細かな変化があり、どんな意味が含まれているのかを知りたくなる。そして本作の世界にもっと浸っていたくなるのだ。国内で上映され、より多くの人がこの傑作を目の当たりにする時が、今から待ち遠しい。

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