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小学校〜それは小さな社会〜

私たちは、いつ“日本人”になったのだろう。日本人は世界的に見て規律正しい人種と言われ、電車は時刻表通りに運行し、人は我慢強く列を作る。だが、それを当然のように受け入れ、実行できる規範意識を、如何にして身につけたのだろうか。

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2024年12月

【監督】⼭崎エマ

【制作】2023年/日本・アメリカ・フィンランド・フランス

【Web】https://shogakko-film.com/

【日本公開】12⽉13⽇(⾦)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

【配給】ハピネットファントム・スタジオ

© Cineric Creative / NHK / Pystymetsä / Point du Jour

小学校教育に見る“日本人ができるまで”

私たちは、いつ“日本人”になったのだろう。日本人は世界的に見て規律正しい人種と言われ、電車は時刻表通りに運行し、人は我慢強く列を作る。だが、それを当然のように受け入れ、実行できる規範意識を、如何にして身につけたのだろうか。英国人と日本人のハーフで、公立小学校とインターナショナルスクールを経て、19歳で渡米した映画監督の山崎エマ氏は、日本の規則だらけの学校教育に息苦しさを感じていたそう。しかし米国にて「よく働く」「時間に遅れず責任感がある」「チームへの貢献が素晴らしい」と周囲に褒められるうち、自身も無意識のうちに日本人の特質を身につけていたことを実感。「6歳児は世界のどこでも同じようだけど、12歳になるころには、日本の子どもは“日本人”になっている。それはすなわち、小学校に鍵があるのではないか」と確信した。そうした視点から作られたのがこのドキュメンタリー映画『小学校〜それは小さな社会〜』、英題『The Making of a Japanese』だ。

本作では1年生と6年生に対象を絞り、授業や掃除当番、給食配膳、委員会、運動会などを撮影。時間を守れるか、提出物を提出できるか、縄跳びを跳べるようになるか、できない場合は課題と向き合い、上達を目指して努力できるかといった「今後、人生において必要となるであろうスキル」を指導する先生と、スキルの習得に向け努力する子どもたちの姿が描かれる。その様子はなかなか過酷であり、時にはピンと空気が張り詰め、緊張の一瞬が訪れることも。「子どもが日本人に成長する」プロセスが生易しいものではないことを再認識させてくれる。まるで子どもたちと一緒に歩んでいるかのような臨場感あふれるカメラワークで、教室での笑顔や涙、何気ない瞬間までもが丁寧に映し出されている点も、本作の見どころの一つだ。

本作を観た人は日本の学校教育に関して、様々な思いを巡らせることだろう。自身の過去を想起したり、日本の学校教育の役割に気づいて感嘆したり、児童や先生に共感したり。是非あなたも本作を通して一度子ども時代に帰り、日本の教育と自分の成長の過程に、思いを馳せてみてはいかがだろうか。

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