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ドライブ・イン・マンハッタン

とある夜のニューヨーク。ジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った女性客がタクシーに乗り込み、行き先がマンハッタンであることを告げると、車は静かに走り出した。ダコタ・ジョンソンが演じる女性客は、洗練された容姿で有能さを感じさせるキャリアウーマン。一方、ショーン・ペン扮する運転手は、粗野で口が悪いながらも、車内でマネープラントを育てる一面を見せたり、ジョークを交えて軽妙に会話を広げたりするなど、どこか憎めない人物だ。見知らぬ二人は「相手がどういう人間か」を当てたり、「よりインパクトのある自分の経験談」を言い合ったり、それを点数制にして競ったりしながら、目的地へと向かっていく。

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2025年2月

【キャスト】ダコタ・ジョンソン/ショーン・ペン

【監督】クリスティ・ホール

【制作】2023年/アメリカ

【Web】https://dim-movie.com

【日本公開】2月14日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開

【配給】東京テアトル

© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.

二大スターが贈るワンシチュエーション劇の珠玉作

とある夜のニューヨーク。ジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った女性客がタクシーに乗り込み、行き先がマンハッタンであることを告げると、車は静かに走り出した。ダコタ・ジョンソンが演じる女性客は、洗練された容姿で有能さを感じさせるキャリアウーマン。一方、ショーン・ペン扮する運転手は、粗野で口が悪いながらも、車内でマネープラントを育てる一面を見せたり、ジョークを交えて軽妙に会話を広げたりするなど、どこか憎めない人物だ。見知らぬ二人は「相手がどういう人間か」を当てたり、「よりインパクトのある自分の経験談」を言い合ったり、それを点数制にして競ったりしながら、目的地へと向かっていく。運転手は人間観察が上手く、その会話術も相まってどんどん女性客の情報を引き出していってしまう。彼女に恋人がいること。その恋人が既婚者であること。複雑な家庭環境で育ったことから父性を求めており、中年の既婚者である恋人に惹かれてしまったこと──。女性客は失礼な運転手に度々腹を立てるが、やがてその会話は心の奥底に響き始め、彼女は誰にも言えず、隠していた胸の内を明かしていく……。

主演のジョンソンは本作の製作者としても名を連ねている。彼女は映画界で派手な娯楽作品が幅を利かし、ヒューマンドラマにスポットが当たらない昨今の風潮に疑問を抱き、アート性の高い映画製作を熱望していたという。そんな彼女が脚本家専門サイト「The Black List」のトップ3に選出された新進気鋭の劇作家クリスティ・ホールの脚本と出会ったことで本作が動き出したそうだ。二人以外にほぼ出演者がいないワンシチュエーション劇で、名優たちの表情の変化や視線などから読み取れる感情の動きも、見どころの一つだろう。

私たちの間では色んなものが効率化され、サービスを介した人間関係は消失しつつある。知らない人同士だからこそできるコミュニケーションにより、色んな発見や豊かさ、出会いがあったかもしれないのに──。そんな大切なことを思い出させてくれる、心揺さぶるヒューマンドラマだ。

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