モンテ・クリスト伯
【キャスト】ピエール・ニネ/アナイス・ドゥムースティエ/バスティアン・ブイヨン/ロラン・ラフィット/パトリック・ミル/アナマリア・ヴァルトロメイ/ヴァシリ・シュナイダー/ジュリアン・ドゥ・サン・ジャン/ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
【監督】マチュー・デラポルト/アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール
【原作】アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』
【制作】2024年/フランス
【日本公開】11/7(金) TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
【配給】ツイン
© 2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 FILMS – FARGO FILMS
幾度となく映像化されてきた『巌窟王』の最新型
文豪アレクサンドル・デュマが19世紀半ばに発表して以来、時代を超えて読み継がれてきた冒険小説『モンテ・クリスト伯』。日本では『巌窟王』の題名で親しまれるこの名作は、これまで幾度となく映像化や舞台化され、アニメやコミック、ゲームなどサブカルチャーにも大きな影響を与えてきた。
そんな歴史的作品を2024年にフランスが映画化した「最新型」が本作である。第77回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映されると、11分に及ぶ熱狂的なスタンディング・オベーションを受け、フランス国内では940万人を超える観客を動員する大ヒットを記録。さらに全世界興収は1億ドルを突破し、第50回セザール賞では最多14部門にノミネート。衣装デザイン賞と美術賞を堂々受賞した。
将来を嘱望された若き航海士エドモン・ダンテスは、策略に巻き込まれ無実の罪で投獄される。生きる望みを失いかけた彼の前に現れたのは、脱獄を企てる老司祭だった。司祭はダンテスに学問と教養をもたらし、さらにテンプル騎士団の秘宝の存在を明かす。囚われの日々から14年。奇跡的に脱獄したダンテスは莫大な財宝を手にし、謎めいた大富豪“モンテ・クリスト伯”としてパリ社交界に姿を現す。そして、自らを陥れた3人の男に復讐の刃を向けていく──。
本作は一見すると小説に忠実のようでありながら、随所に大胆な改変を施している。最大の特徴は、原作ではダンテスを陥れたヴィルフォール検事の父がナポレオン支持者だったのに対し、本作ではヴィルフォールの妹としてナポレオン派の女性・アンジェルを登場させている点だ。映画では冒頭から、海に落ちたアンジェルを救うダンテスの高潔さと、彼女を見殺しにしようとするダングラールの冷酷さが鮮烈に対比される。こうした原作との差異を読み解くのも本作の楽しみ方の一つだろう。
多彩な要素を盛り込みながらも展開はテンポ良く、3時間という長さを感じさせない本作。世代を問わず楽しめる本格娯楽作に仕上がっている。
