しあわせな選択
【キャスト】イ・ビョンホン/ソン・イェジン/常識の枠を軽々と踏み越えた「就活サバイバル」パク・ヒスン/イ・ソンミン/ヨム・ヘラン/チャ・スンウォン/ユ・ヨンソク
【監督】パク・チャヌク
【原作】ドナルド・E・ウェストレイク『斧』
【制作】2025年/韓国
【日本公開】3月6日(金) TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
【配給】キノフィルムズ
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常識の枠を軽々と踏み越えた「就活サバイバル」
製紙会社で25年間、堅実に働いてきたマンス。郊外の大きな家に、妻と2人の子供、2匹の犬─誰もが羨む“理想的”な人生を送っていた。しかし、勤務先の製紙会社が買収され、大規模なリストラが実施される。高校卒業後に就職し、通信大学で学位を取得、業界の名誉である「今年のパルプマン賞」まで受賞した有能な管理職であるにもかかわらず、マンスは容赦なく解雇されてしまう。
一家の大黒柱として、3カ月以内の再就職を誓うマンスだが、現実は厳しい。退職金を切り崩す生活の中、ついに住宅ローンの督促状が届く。追い詰められた彼は、日本に販路を持ち業績も好調なムーン製紙へ履歴書を手に飛び込むものの、門前払い同然の扱いを受けてしまう。それでも「自分こそがこのポジションにふさわしい」と確信したマンスは、ある衝撃的な発想に辿り着く──。
監督は『オールド・ボーイ』でカンヌ国際映画祭グランプリ、『別れる決心』で同監督賞を受賞し、常にタブーを打ち破り、緻密さと完璧な美学で観客を魅了してきたパク・チャヌク。原作はドナルド・E・ウェストレイクの小説『斧』(1997年)で、一度は映画化権を逃し、2005年にコスタ=ガヴラスが映像化したが、改めて許可を得て20年後に本作を完成させた。時代の変化によって設定は大きく更新され、むしろ2026年の現在のほうが、その残酷なテーマは生々しいリアリティを帯びている。
マンスを演じるのは、『イカゲーム』で世界的な存在感を示したイ・ビョンホン。妻ミリ役には、『私の頭の中の消しゴム』や『愛の不時着』で知られるソン・イェジン。完璧だった父親が一線を越えてしまう悲哀と滑稽さを、イ・ビョンホンは圧巻の表情で体現する。緩急自在のドラマ、構図や照明、俳優の配置、カメラワークまで徹底的に計算された映像表現によって、観客は一人のサラリーマンの物語から、より大きな世界へと連れ出されていく。斬新で大胆な設定を、誰もが引き込まれるエンターテインメントへと昇華させた、韓国映画の力強さが凝縮された一作だ。
