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恐怖そして感動──シェアード・ワールド「SCP財団」とは

大型インターネット掲示板での一件の投稿を発端とし、インターネット・ミームとして発展してきたシェアード・ワールド「SCP財団」。そのクォリティの高さから、近年では映画や小説、ゲームなど様々なメディアで取り上げられている。本稿では、世界中で多くの人々を魅了する「SCP財団」の世界の一端に触れたい。

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2022年4月号

2007年。英語圏の大型インターネット掲示板「4chan」に、「SCP-173」と題された一件のクリーピーパスタが投稿された。これをきっかけに、同様のテイストの画像や文章作品が投稿されるようになる中で、それらの異常な存在・物品・場所などを「確保(Secure)、収容(Contain)、保護(Protect)」する架空の組織「SCP財団」が誕生。現在に至るまで、Wikiサイトで有志による共同創作が行われており、英語圏の本家サイトのみならず、日本をはじめ10カ国以上の国で、支部という形で運営されている。

※「SCP-173」として投稿された画像は、アーティスト・加藤泉氏の彫刻「無題 2004」をKeisuke Yamamoto氏が撮影した写真。投稿された当初は無断転載であったが、その後商業目的に使用しないことを条件に、加藤氏から許諾を受け、サイト上に掲載されている。

各作品のナンバリングの後ろには、どの国の支部で書かれたのかが分かるように国名の略号が入っている(日本であれば「SCP-番号-JP」。本家サイトは略号なし)。尚、Wikiサイト内での投稿者は「財団職員」で、作品は財団職員による「SCP報告書」という設定で投稿されており、サイト内ではその設定が遵守されている。そのため、サイト内で「SCP財団」が「架空の存在」であることに触れるのは、“野暮”であることだけ述べておこう。

「SCP財団 日本支部」/「SCP財団」ロゴ

「SCP財団 日本支部」/「SCP財団」ロゴ

「SCP財団」の世界では、既存の科学では説明がつかないような存在・物品・場所が多く存在しており、ものによっては多くの人に被害が及ぶばかりか、世界滅亡の可能性もある。そういった危険な存在は、「SCPオブジェクト」または「SCiP」呼ばれている。「SCP財団」は、その脅威から人々を守るために活動しているのだ。

「財団職員」による「SCP報告書」は、基本的に1.オブジェクトクラス、2.特別収容プロトコル、3.説明、4.補遺という4つの構成で作成されている。1.オブジェクトクラスとは、SCPオブジェクトの危険度を表現するもので、危険度の高い順から「Keter」「Euclid」「Safe」と設定される。尚、これはあくまで基本的な設定であり、中には特殊なものも存在する。2.特別収容プロトコルは、SCPオブジェクトの保管・管理方法を説明するものだ。ただ、この時点ではまだSCPオブジェクトについての詳細の説明は成されておらず、次の3.説明でようやくそのSCPオブジェクトがどんなものであるのか、被害状況、確保までのエピソードなどが語られる。そして最後の4.補遺では、後日談などが書かれている。この4.補遺では、そのSCPオブジェクトの真実が語られることもある。3.説明まではそこまで危険な存在と思えなかったものが、4.補遺でゾッとするような内容が書かれているパターンも多々見られる。

さて、本稿次ページ(webでは上から降順)では、数あるSCPオブジェクトの中から幾つかを紹介する。これにより、SCP財団の世界観を読者にお伝えできればと思う。

SCPオブジェクトの一例①

1:SCP財団における元祖と言える作品であり、最も有名な作品の一つ。SCP財団に投稿される作品の方向性を決めた作品とも言える。誰かに見つめられている間は動かないが、目を離した瞬間(瞬きもアウト)に高速で動き、人間を襲う。
URL:http://scp-jp.wikidot.com/scp-173

SCPオブジェクトの一例②

2:日本発のSCPオブジェクトの中でも有名な作品。このSCPは”それ”を見ると強力なミーム汚染を引き起こすとされており、小屋の中を人間が覗き込むと、対象は激しく動揺し、「ねこが居た」と報告するようになる。更に対象はこの”ねこが居る”という観念に、以降強く執着するという。不気味さとコミカルさの両立が成されている作品。ねこはいますよろしくおねがいします。
URL:http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp

SCPオブジェクトの一例③

3:「Sky Blue Sky(青い、青い空)」としても知られるSCPオブジェクト。当初はオブジェクトクラス「Keter」であったが、現在は「Explained(解明済み)」という特殊なクラスに位置づけられている。このSCPオブジェクトは、視覚的な影響を恒常かつ永続的に与えるものであり、カラー写真技術の発展と共にその影響が全人類に及んだ。このSCPに感染すると、その人の視覚から本来あった美しい色彩が失われ、下品な色彩に塗りつぶされてしまう。カラー写真を見た人間全てに感染し、財団は収容を試みるも時既に遅し。収容不可能と判断した財団は、全人類に記憶処理を施して「世界は元からこの色彩だった」という記憶に書き換えた。その後に残ったのは、下品な緑に包まれた山々・可笑しい色を見せ続ける海・空色で構成された空。現在に残る「白黒写真」だけが「本来の色」を私たちに伝えている。尚、このオブジェクトは財団が事実上の敗北宣言をしたということも特筆すべき点と言える。
URL:http://scp-jp.wikidot.com/scp-8900-ex

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