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コーヒー市場に吹く新しい風
進化し続ける「コンビニコーヒー」

手軽に食べられるおにぎりやパン、インスタント食品だけでなく最近では専門店顔負けのクオリティの冷凍食品やスイーツなど、バラエティ豊かな商品が並ぶコンビニ。 そんな中でも特に売り上げを伸ばし、今やコンビニの売上全体の約25%を占めているのがカウンター商品と呼ばれる、レジで注文を受けて提供するスタイルの飲食商品だ。とりわけ、一年を通してパンやサンドイッチの「ついで買い」される機会が多いコーヒーの貢献度は大きい。コンビニのレジカウンターでコーヒーを注文するスタイルは、今やすっかりおなじみの光景だ。 コンビニで缶コーヒーを買う、というイメージはもはや過去のものになりつつある。そんなコンビニコーヒーは今、独自の進化を遂げ新しい「コーヒーの楽しみ方」を獲得している。本稿では大手3社のコーヒーの歩みや魅力に迫っていく。

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センチュリー2020年9月号

美味しいコーヒーにこだわり試行錯誤。
企業努力の結晶「セブンカフェ」

コンビニコーヒーの火付け役となったのは、2013年に登場した『セブン-イレブンジャパン』(以下『セブンイレブン』)の「セブンカフェ」だ。1杯100円という低価格ながら、スッキリと癖のない味わいで、幅広い世代に支持されている。
 そもそも同社では、1980年ごろから幾度にもわたりカウンターコーヒーの提供を試みていたのをご存知だろうか。
 当初はカウンター内でドリップしストックしたものを提供していた。1時間ごとに淹れなおすというマニュアルはあったものの、コンビニの多忙さゆえに徹底が難しく、抽出して時間が経ったコーヒーは風味が損なわれていた。
 そこで1988年、注文を受けてから一杯ずつドリップするマシンを導入。しかし焦げた香りが店内に充満してしまい、あえなく断念。その反省を活かし、1990年代始めには一杯分ずつ挽き豆を密封したカートリッジ方式へと切り替えを試みるも挽き豆での保管はコーヒーの風味が落ちてしまうなどの問題点があった。
 1990年代後半に入ると米国のコーヒーチェーン店『スターバックス』などの日本進出によってこれまでに馴染みの薄かったエスプレッソコーヒーが大人気となった。それをうけ、2002年から『セブンイレブン』でも「バリスターズカフェ」という名称で、エスプレッソコーヒーやカフェラテの提供を開始。全国約2000店舗に展開し、若い世代を中心に人気を得たが、中高年層の獲得にはつながらなかった。『セブンイレブン』は独自の調査を行い「日本人はドリップ式コーヒーを好む傾向にある」と確信。さらに約200社のコーヒーの味を分析し、多くの人に好まれる味を追求した。
 こうして試行錯誤の末、2013年、ペーパードリップを採用した「セブンカフェ」が、コンビニコーヒーの市場に参入。豆挽きからドリップまで専用マシンで行うことで、低価格ながら、挽きたて、淹れたての美味しいコーヒーの提供が実現したのだ。
 こうして「セブンカフェ」はカウンター商品の看板とも言える大人気商品となったのである。

“スタバ”意識の本格フラッペで
女性ニーズにマッチした「ファミマカフェ」

コンビニ各社がコーヒーをはじめとするカフェ商品の展開に積極的な背景には幅広い顧客層を獲得したいという狙いがある。2016年の調査では「コンビニをほぼ毎日利用する」と答えたユーザーは20代で男性13.2%、女性7.3%と倍近くの差があり、10代を除くほぼすべての年代で、コンビニの利用率は圧倒的に男性が多かった。各社は女性ユーザーの獲得で、顧客拡大につなげたい意向を示している。
 新たな客層の開拓の成功事例として、前述したコーヒーチェーンの大手『スターバックス』が挙げられる。同社のの代名詞といえばやはり「フラペチーノ」だろう。コーヒーやクリーム、果肉などと氷を合わせて攪拌した冷たいドリンクは、シャリッとした独特の食感が魅力。コーヒーにあまり親しみのない若者や女性もこの商品で取り込むことに成功している。
 セルフ方式の提供で低価格を実現し、幅広い層に親しまれるコーヒーの味で勝負した「セブンカフェ」。一方で同じセルフ方式ながら、より女性、若者世代に向け『スターバックス』を意識したカフェ商品を展開するのが『ファミリーマート』の「ファミマカフェ」だ。同社のカフェ商品で特に人気なのがフラッペ。凍った状態で容器の上から揉み、専用マシンでミルクを注いで混ぜれば、ひんやり冷たいフローズンドリンクが作れるとあって好評だ。
 また、フラペチーノは一杯400〜700円程度なのに対し、フラッペは一杯250円〜300円程度と、手頃な価格である点もポイント。
 『ファミリーマート』ではコーヒーは男性が多く購入するのに対し、フラッペは女性が多く購入しているのだという。
 他にも女性人気の高いラテメニューや、季節限定商品も数多く展開する「ファミマカフェ」は、女性ニーズとマッチした戦略でコンビニコーヒーの流行を牽引していく。

人が淹れるから、美味しい。
手渡しにこだわる「MACHI café」

マシン導入によるセルフサービスを展開する2社とは打って変わり、独自の展開で攻めるのは、『ローソン』が提供する「MACHI café」だ。
 同社のスイーツブランド「UCHI café」の展開をきっかけに「あなたのマチが、どこでも、カフェになる」というコンセプトで2011年から展開している。
 コンビニと言えば便利で機能的なイメージが強いが、そこをあえて「接客重視」で街中のカフェを意識した店づくりにシフト。本場イタリア製のエスプレッソマシンを使い、カフェラテ、抹茶ラテなどラテメニューを充実させている他、フルーツティーやチーズティーなどの変わり種ドリンクもメニューに並ぶ。
 ところで「MACHI café」提供店舗では、スタッフの制服が通常店舗と異なるのをご存知だろうか。『ローソン』の制服といえば企業カラーの青と白のストライプが特徴的だが、こちらでは茶色いエプロンを着用し、さらに一部のスタッフは黒のエプロンを着用している。これは同社独自の「ファンタジスタ制度」というもの。黒いエプロンは接客、コーヒーの提供、マシンのクリーニングなどの高いスキルを身に着けたスタッフのみが着用できる、いわば認定証なのだ。現在この認定を受けたスタッフは全国で1万3,000名を超え、今も増え続けている。店舗に立ち寄った際はぜひ注目していただきたい。

『全日本コーヒー協会』によれば、コーヒーの国内消費量は1980年代半ばから徐々に増加しており、現在では年間消費量は45万トンを超えるという。
 昨今の「カフェブーム」も追い風となり、ますます拡大する日本のコーヒー市場。喫茶店とも、ボトル・缶飲料とも異なる新しい「コーヒーの楽しみ方」を提供するコンビニコーヒーは味や価格、提供スタイルなどにこだわり、これからも進化し続けていく。

(参考)
『戦略は一杯のコーヒーから学べ!』永井孝尚/中経出版
『なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?』上坂徹/あさ出版
『「コンビニコーヒー」最新事情 セブンに習ったファミマ、スタバ意識のフラッペ戦略』デイリー新潮 他
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