ボトル缶材料はペットボトルからアルミへ──脱プラをめぐる昨今の動き

世界的に脱プラスチックの動きが加速する中、飲料水のボトル缶材料をペットボトルからアルミに切り替えていこうとする流れがある。ペットボトルはゴミ分別によるリサイクルも進んでいるはずだが、何故、アルミが注目・推奨されているのか? 本稿では、国内外の廃プラスチックリサイクル率の現状などに触れながら、この動きに対する理解を深めていく。

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マスターズ2021年12月号

プラスチック使用削減に伴い
飲料水ボトルに注目

「脱プラ」という言葉が浸透し始め、普段の生活に変化が訪れたのがいつごろだったか。2020年1月から『スターバックス コーヒー ジャパン』が紙ストローを全面的に導入し、同年7月1日からは政府の方針で全国でレジ袋の有料化がスタートした。この辺りから、肌感覚として「プラスチックを減らす動きが高まっているな」と、多くの人が思い始めたのではないだろうか。

そもそも何故、世界的にプラスチック利用を減らそうとする動きがあるのか。プラスチックは自然界に存在する微生物によって分解されることがなく、かと言って燃やすと有毒ガスなどが発生する。また、原油を精製した「ナフサ」(粗製ガソリン)から作られており、日本では原油の約6%がプラスチック製品になっているそうだ。たとえばレジ袋だけで、年間約300億枚になる。これは原油に換算すると約55万キロリットルだという。こうしたことを踏まえて、「環境に悪い」「貴重な原油資源を守るべき」というので、もう少しプラスチックの使用を減らしていこうというのが、ざっくりした話だ。『国連環境計画(UNEP)』によると、日本の使い捨てプラスチックごみの1人当たり排出量は年間約32キロで、米国に次いで世界2位。脱プラの動きを加速させ、削減に向けた実効性のある取り組みが迫られている。

その中で注目されているのが、飲料水のボトル缶材料だ。現状ペットボトルが主流だが、アルミ製ボトル缶に切り替えていこうとする流れがある。2021年6月にイギリス・コーンウォールで開かれたG7サミットでは、ミネラル・ウォーターがペットボトルではなくアルミ製ボトル缶で配られ話題になった。とは言え、「ペットボトルと比べて、アルミのどこがどの程度エコなんだ?」と思った方も多いだろう。

アルミの水平リサイクル率の高さ

「#自販機の脱プラ」「#アルミボトル缶」「#循環型社会への貢献」「#水平リサイクル」─エコなキーワードが並ぶこれらのハッシュタグは、『日本アルミニウム協会』の公式ツイッターによるものだ。同協会では最近このような投稿をし、環境面でのアルミ缶の優位性をアピールしている。2021年7月には、2020年度の“水平リサイクル率”を3択クイズ形式で出題した。水平リサイクル率とは、使用済みの製品を資源に戻し、再び同じ製品を作り出すことの割合を指す。つまり、アルミ缶をリサイクルしてアルミ缶に再生できる割合はどれくらいか、というクイズだ。この問題の正解は70%。これに対しペットボトルは、『PETボトルリサイクル推進協議会』が公表する最新数値の2019年度で12.5%にとどまる。もっとも、分母をどのように数えるかなどの条件で数字が動くようで、同協議会の主張によれば、同じ条件での計算ならアルミの水平リサイクル率は48%になるという。いずれにしろ、この数値に大きな開きがある点がアルミの特長になる。アルミ缶はリサイクルに伴う電力コストが高いことから、昔から再利用が進んでいるそうだ。こうした点から、飲料水のボトル缶材料をペットボトルからアルミ缶にシフトする動きが、国内外で高まりつつあるのだ。

2112MA特集-ボトル缶材料はペットボトルからアルミへ──脱プラをめぐる昨今の動き(図1)

国内大手の取り組み

『無印良品』を運営する『良品計画』では2021年4月から、全国約300店舗で扱う飲料容器の大半をペットボトルからアルミ製ボトル缶に切り替えた。「これからの社会を考えてドリンクのペットボトルをリサイクル率が高く、循環型資源とされるアルミ缶に切り替えます」─そんな説明書きを記したポップが店頭で目に入る。同社では以前から、マイボトルを持参すると店内の給水器から無料で給水できるサービスなど、脱プラの動きを進めてきた。嶋崎朝子・執行役員食品部長は「(アルミ缶は)回収ルートがしっかり整備されており、リサイクル率も高い。廃棄物やフードロス削減につなげたい」と強調し、環境意識への高さを見せている。
また、『ダイドードリンコ』では2021年3月以降、一部の法人顧客のオフィスに設置する自動販売機のお茶、水、炭酸水、スポーツドリンクなど6種類の飲料容器を、ペットボトルからアルミ製ボトル缶に変更している。担当者は「プラスチックの削減を目指す企業から、自販機の商品をペットボトルからアルミ缶に変えられないかという相談がいくつもきている」と話す。

こうした流れを先取りする形で、国内アルミ圧延で最大手の『UACJ』は飲料向けの生産能力強化を着々と進めてきた。米国では競合他社の多くが需要増を見越して自動車向けの生産強化に動く中で、同社は缶材需要を狙って飲料向けの生産能力強化に向けて戦略を立ててきたのだ。2017年には190億円を投じて設備を強化し、そこから3年後の2020年には生産量を約4割増やした。将来的な需要増を見越した上でのことだったが、需要増は想定以上でさらなる拡充も検討しているとか。東南アジアでも缶材需要は高まりを見せ、2017年以降に390億円をかけて設備を増強。2年後の2019年には生産量を8割ほども増強した。米国でも東南アジアでも、同社にとって脱プラが大きな追い風になっている。海外営業統括部長の後藤健介氏も、「ここまでの需要はうちも読めていなかった」と話すほど。米国のサンフランシスコでは、公共施設でのペットボトルの販売を禁じるなど一部地域で規制が進んでいるという。『UACJ』後藤氏は、「仮に、世界の飲料で最大市場のミネラル・ウォーターの容器が1%でもアルミ缶になれば非常に大きい」と、期待を込める。G7で配られたアルミ製ボトル缶入のミネラルウォーターは、まさにこうした流れの象徴的な出来事であったわけだ。

アルミの課題

飲料ボトルのアルミ製ボトル缶への切り替えには、課題もある。その一つがペットボトルとの原価差だ。アルミ製ボトル缶への切り替えを行った『良品計画』や『ダイドードリンコ』では、当該商品の内容量を減らすなどして実質値上げを行い対応した。これについては両社とも、容器の原価コストが上昇したことを理由としている。ただ、『良品計画』の担当者は「売れ行きに特にマイナスの影響はなく、お客様からもネガティブな声はない」と話す。
もう一つの課題として、製造から廃棄までにかかるCO2の排出量もあげられる。容器1本あたりのCO2排出量を比較すると、ペットボトルよりもアルミ製ボトル缶のほうが多い。ペットボトルの形成温度が200度なのに対し、アルミ製ボトル缶は600~700度程度で、多くのエネルギーを必要とする。『容器間比較研究会』の報告によると、500mlの容器の製造から廃棄までにかかるCO2排出量は、ペットボトル(重量37g)の137gに対して、アルミ缶(重量19g)は170gで24%多い。ただ、水平リサイクル率でペットボトルに大差をつける現段階では、リサイクルによる抑制効果を加味すれば、アルミ缶のほうがCO2の排出量は少ないという見方もある。

 電力コストの高さもアルミの欠点の一つだ。アルミの原料である鉱石のボーキサイトはオーストラリアやギニア、ベトナム、中国などで比較的豊富に見つかる。それをアルミにするには電気分解する必要があり、そこで使う電気の量は銅の精錬の10倍もかかるとされる。大量の電気が必要なことから、日本ではオイルショック以降、ほとんどの工場が閉鎖。アルミ精錬は電気代が安価な海外に依存するように産業構造が変化してきた。現状、世界のアルミの約40%は中国で作られている。電気を大量に必要とすることでコストだけでなくCO2排出量にも影響してくるわけだが、最近では中国で大規模な太陽光発電所の建設が進んでおり、技術革新が進んだことで電力を生む効率も上がっている。世界的にもここ10年間ほどでグリーン電力(「再生可能エネルギー」で作った電気)の生産コストは大きく低下しているそうだ。こうした自然エネルギーを活用して作られたアルミは「グリーンアルミニウム」と呼ばれ、CO2の排出量を抑えることにもつながるとされている。より技術が進めば、コストもさらに下がっていくだろう。環境への配慮と電力コスト面、双方の課題をクリアできるのではと、期待がさらに高まる。

国内企業もアルミボトル缶のミネラル・ウォーターを生産中
イギリス・コーンウォールで開かれたG7サミットで、アルミ製ボトル缶のミネラル・ウォーターが配られたことに触れたが、日本国内でもこうした取り組みに力を入れている企業がある。清涼飲料水の企画・製造・販売を行う『ジャスティス』では、2021年3月から「ナチュラルミネラルウォーター・アルミボトル缶」の一般販売を、ECサイトで開始した。その狙いは、アルミ缶のリサイクル率の高さに着目し、サステナブルな社会の創出に寄与しようというもの。海洋プラスチックゴミが海洋生物に大きな影響を与えている現実を深刻に受け止め、「飲料を扱う会社として環境に配慮した商品を提供すべきだ」と、開発に至ったという。一部企業では自社オリジナルデザイン缶で製造し、社内全体で利用されているそう。さらに機運が高まれば、同社のこのような取り組みは一層評価されそうだ。

廃プラスチック
日本のリサイクル率は高い?

水平リサイクル率に注目してきたが、日本におけるプラスチック自体の有効利用率は、世界的に見てもかなり高い水準だ。日本では年間約850万トンの廃プラスチックが発生し、その有効利用率は2019年の段階で約85%。ただし、実はこのうちの60%分は焼却処分時の熱を発電に活用するといった「サーマルリサイクル」によるもの。これは、大雑把に言うと回収したプラゴミを利用した火力発電であり、それをリサイクル率として加えて計算しているのだ。
実際に資源を循環させることができているのは、廃棄されているプラスチックの25%程度だとも言われる。プラスチック全体ではなくペットボトルに限った回収率とリサイクル率も、欧米諸国と比べるとかなり高い水準を誇っているように見えるが、欧米では先述のサーマルリサイクルをリサイクルとして認めておらず、こうした数字の開きはその辺りの認識の差から生まれているようだ。
上記のような現状も加味してか、大手飲料メーカーはプラスチック問題への対応で目下、ペットボトルの水平リサイクル率の引き上げを急ぐ。飲料メーカーが加盟する『全国清涼飲料連合会』は、2030年までに水平リサイクル率を50%にまで引き上げる目標を掲げ、関係各社は取り組みを加速させている。

2112MA特集-ボトル缶材料はペットボトルからアルミへ──脱プラをめぐる昨今の動き(図2)

2021年2月、『サントリー』は兵庫県東播磨の2市2町と連携協定を締結したことを発表。回収したペットボトルをペットボトルとして再利用する水平リサイクルの推進のため、取り組みを進めている。また、飲料ボトルとは異なるが『花王』と『ライオン』の連携による「RecyCreation」、『ユニリーバ』の「UMILE」など、洗剤などを扱う大手メーカーも独自の取り組みを進めている。リサイクルが困難な洗剤・シャンプーなどの日用品の詰め替えパウチを回収し、マテリアルリサイクル(マテリアル(物)からマテリアル(物)へとリサイクルすること)を目指す。
競合企業、小売店、回収事業者などが行政と連携して進めているという。たとえば「RecyCreation」では、店頭に専用回収ボックスを設置し、お客さまから洗剤やシャンプーなどの使用済みつめかえパックを回収し、再生プラスチックに加工して提供する。今後はさらに回収に協力してもらえる自治体や企業・店舗の拡大を図っていくという。

様々な企業や国の取り組みによって、プラスチックの水平リサイクル率を上げるべく進んでいる。この調子でペットボトルの水平リサイクル率がアルミ缶に追いついてきた場合、いずれはボトル缶のほうが却ってペットボトルよりも環境に負荷がかかる、という話になってくるかもしれない。どちらにしろ、環境負荷を減らせる方向に進んでいくことは喜ばしいことだ。
だが、そうした水準を高めていく前にまず、廃プラのリサイクル率の算出方法やサーマルリサイクルを含めるかどうかなど、基準を統一すべきではないか。算出方法が違う状態で「欧米よりも数字が高い」などと喜んでいても、何の意味もないだろう。環境に対する影響を誰もが客観的に判断できる数字を示した上で、「こうしたほうが環境に良い」という提案や啓蒙をしてほしい。皆が納得できる公平な根拠に基づいていれば、もっと意識を高めエコに協力的になるのではないだろうか。

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