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美しき日本の言葉たち

日本語は自然との繋がりが深い言語だ。 自然現象に人の心情を重ねたり、一つの自然現象を多様な言葉で表現したり、 多くの美しい日本語が生まれ、今日まで受け継がれてきた。 日本特有の趣深い表現は、私たちに日本語という言語の魅力を改めて気づかせてくれる。 本稿では、そんな日本人にあまり知られていない日本の言葉たちを紹介する。

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2022年6月号

<雨に関する言葉>

【遣らずの雨/やらずのあめ】

 あたかもお客様(恋人との説も有)を帰したくないかのように、降ってくる雨のこと。

【天泣/てんきゅう】

 晴れているのに雨が降ってくる時、天が泣くと表現する。雨雲が移動したり、風で雨が運ばれてきたりした時にも使われる。「天気雨」「狐の嫁入り」ともいう。

【男梅雨/おとこつゆ】

 激しく降って、サっと止む雨。

【女梅雨/おんなつゆ】

 弱い雨がしとしとと続く梅雨のこと。

【私雨/わたくしあめ】

 狭いところに突然降る雨。特に麓が晴れているのに、山の上だけに降る雨。箱根や丹波などが有名。

【鬼洗い/おにあらい】

 大晦日に降る雨。

<花に関する言葉>

【花明り/はなあかり】

 桜が満開で、闇の中でもそのあたりがほのかに明るいこと。

【花席・花筵/はなむしろ】

 花見の宴に使う席。転じて、花見の宴。草花などの一面に散り敷いているさまを筵に見立てていう語。

【花の鏡/はなのかがみ】

 池水などに花の影の映るのを鏡に見立てていう語。

【花心/はなごころ】

 うつりやすい心。あだこころ。うわきごころ。はなやかな心。

【花紅葉/はなもみじ】

 春の花と秋の紅葉。花や紅葉。花のように美しい紅葉。

【花帰り/はながえり】

 新婦の初めての里帰り。

<空に関する言葉>

【銀湾/ぎんわん】

 天の川のこと。銀河の別名。

【旻天/びんてん】

 秋の天空の凛冽なさま。

【夜這い星/よばいぼし】

 流れ星の別名。昔は、「愛しい人に会いたいという強い想いが体から抜け出し、魂が流れ星となって会いに行く」という考えがあった。『枕草子』にも登場する表現。

【日雷/ひがみなり】

 晴天のときに雨を伴わないで鳴る雷。また、ひでりの前兆を示す雷。

【月虹/げっこう】

 夜間に月の光により生じる虹。

【風花/かざはな】

 晴れた空から花が舞ってくるように雪がふわふわと降ってくる様子。

<虫に関する言葉>

【蜉蝣の命/かげろうのいのち】

 寿命が短い虫の中でも特に短いカゲロウを用いて、儚い命を表す言葉。

【虱の皮を槍で剝ぐ/しらみのかわをやりではぐ】

 小さな物事を処理するのに大げさに行うこと。

【蚤の息も天に上がる/のみのいきもてんにあがる】

 小さなものやとるに足りない者でも、努力をすれば望みは叶えられるということ。

<人に関する言葉>

【心化粧/こころげしょう】

 人に好感を与えるために、心構えをすることを指す。素の状態ではなく、良い印象を持ってもらうために気持ちを整えることを化粧に例えていう。

【面映い/おもはゆい】

 相手と顔を合わせることが照れ臭い、きまりが悪いという意味を表す。「面」が「まばゆい」という意味が語源で、相手のことが眩しく感じる時に使われる。褒められて恥ずかしい時、気まずい相手と会う時にも用いる。

【恋衣/こいごろも】

 強い恋心を表す言葉。常に相手を想っていることから、その気持ちを身に着ける「衣」に例えて使われる。

【時雨心地/しぐれごこち】

 今にも泣きそうな状態のことを指す。時雨は、秋の終わりから冬にかけて降る雨という意味のほかに、涙ぐむ、涙を流すという意味も持つ。泣きそうな気持ちを雨の様子になぞらえた言葉。

【涙雲/なみだぐも】

 天気が悪く雨が降ってきそうな時に雲が出てくることから、涙ぐんでいる時の状態を表す。泣きそうな時は、目にまるで雲が浮かんだように視界が曇ることから生まれた表現。

【心勝り/こころまさり】

 期待以上に優れている、気丈であるという意味を表す。

【笑壺/えつぼ】

 大いに笑ったり、喜んだりすることを指す。「笑壺に入る」などと使われる。

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